世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

帰還者と熊

1度での迷宮探索時間はギルドによってまちまちだが、短い者でも最低数時間は探索を行い、長ければ数日に渡って潜り続ける奇人変人もいる。

タマモ達がタルシス出身の傭兵ルイージャを連れて迷宮に潜って1日半程だろうか。留守を任されたカイエンが特に心配こそしないものの、一応気を使ってか酒場には入らず冒険者ギルドの一角で帰りを待っている。ちなみにルイージャの兄マリオンは、ギルドに入ったものの早々に妹と血反吐を撒き散らすような喧嘩をして、そのまま飛び出して以後、姿を見せていない。どうせそのうち戻って来るだろうとカイエンは考え、もし戻ってこなくても初めからいなかったと思えばいい、とも考えていた。

じゃりじゃりと砂混じりの泥をなする様な音が聞こえる。

迷宮から帰ってきた冒険者は大体こういう音を立てる。野生の獣の血と土と泥、そういったものが頭から靴底までこびりつき、舗装された石畳を歩く度にまるで深層に潜む生物の鳴き声の様な音を鳴らす。

「ただいま戻りました」

タマモがカイエンにそう告げて、戦利品を渡す。

ギニアの街中では生えていない植物に素材となる獣の皮や虫の羽、貴重な鉱石、銅製のインゴット、更には大型の熊の爪まである。

「ご苦労だったな、今日はもう休むがいい」

「そうさせてもらいますね、お風呂入りたいですし」

タマモは荷物を置いてゆっくりと息を吐き、半ば眠ってしまっているような顔で馴染みの宿屋〈湖の貴婦人亭〉へと歩いて行った。

 

一刻と半ほど経った頃、お湯を浴びて血と泥を洗い流し、ついでに食事も取ってさっぱりした顔のタマモが戻ってくる。

「それで迷宮はどうだった?」

「大変でした、特に熊が厄介ですね。動き自体はそこまで機敏ではないですが、縄張り意識が強く、一度敵と認識されたら執拗に追ってきます。おまけに人の倍くらいの太さの丸太でも一撃で粉砕出来る爪と筋力を持っています。ルイージャが熊の習性に詳しかったから難は逃れましたけど」

なるほど、とカイエンは呟いた。

どうやらルイージャが、故郷のタルシスの樹海によく似た迷宮で存分に知識を役立てたようだ。詳しく聞くと、迷宮の地形や構造、おまけに生息する生き物まで真似て作ったかのように似ているらしい。

「ところで、よくそんな熊を相手に勝てたものだな」

「いえ、戦ってませんよ。あ、その爪は途中で出会った衛兵から頂いたものです」

どうやらマギニアの軍人はそれなりに練度が高いようだ。カイエンは素直に感心しながら熊の爪を眺めていた。