世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

八丁念仏団子刺し

かつて海都アーモロードで冒険者御用達の店として繁盛した名店〈ネイピア商会〉は、現在は本店を妹に任せて、店主は金の匂いを嗅ぎつけて飛行都市マギニアに新しい店を開いた。本店にはタマモも何度か立ち寄ったことがあり、わざわざ一緒に酒を飲むような仲ではないが、顔見知りとしてそれなりに親しく、冒険者として素材を買い取って貰ったり武具や薬品を買ったり、それなりに仲良くしている。

連日の採集や採掘、ついでに戦闘で素材を得て、金に換えたのを見計らってか、店主のネイピアがほくそ笑みながら、タマモに一振りの刀を見せてくる。

「ところで先日、いい刀が入荷したのじゃが、お主シノビならば刀も使えるであろう? どうじゃ、買っていかんか? 今なら特別に安く、はならんが、特別にお主に優先的に売ってやろう」

タマモはそっと刀を掴み、刀身をじっくりと眺めてみる。

刀に対する鑑定力など持ち合わせていないが、店内に並ぶ他の刀とは一味違う凄みと信頼感を感じなくもない。それにネイピアは根っからの守銭奴ではあるが、客を騙したりナマクラを名刀と騙ったりはしない、実に真っ当でかつ誠実な商人でもある。

 

「まいどあり。またいつでも来るがよい」

 

ネイピア商会を後にしたタマモの手には、例の刀が握られていた。

【八丁念仏団子刺し】

先日、迷宮に潜った際に一際強力な赤毛の獣を撃ち倒した時に手に入れた爪を元に鍛え上げられた名刀で、硬く、軽く、他の刀よりも長い、おまけに妙に手に馴染む。本来なら長年に渡って刀を振るい続けてきたカイエンに譲るべきところだが、なんだか譲るのも惜しい気持ちになってくる、いっそ自分で使ってしまうか。

タマモはそんなことを考えながら、冒険者ギルドへと帰って行った。

 

「え、いいんですか?」

「別に構わんぞ。わしが使おうとお前が使おうと、ギルドの戦力が上がることには変わりない」

カイエンはあっさりとタマモが新しい刀を使うことを承諾した。そしてふと思い出したのか、冒険者ギルドの一室に置いてある荷物に指を向ける。

「そうだ、帝から届け物がある。お前も必要なものがあれば使うといい」

「帝から? 一体どうやって?」

タマモ達がいるのは紛れもなく飛行都市であり、探索しているのは荒れた海流と分厚い雲に阻まれた絶海の孤島だ。そう易々と届け物が来るはずがない。

「いや、わしらと時を同じくして乗り込んでいたそうだが、どうも冒険者の数が多過ぎるせいで我らの所在を見失っていたようだ」

「そうですか、ぜひとも帝には黙っておきましょう」

そんなことで首が飛んでは可哀相すぎる。カイエンも気持ちは同じなのか、小さく首を縦に振った。

帝から届いたのは金属鎧や皮鎧などの防具一色だった。これまでの仕打ちを考えるとありがたい気持ちなど湧くはずもないが、実際に役に立つものを貰えると助かると思ってしまう。

そんな心境を見抜いたのか、カイエンはタマモを一瞥して、ふっと鼻で笑った。