世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

ゴルドーとグリゴ・3

頭目の子鹿も危うげなく狩り終える。さすがに銃声に気づいたのか、茂みから飛び出してくるような間抜けな鹿はもういないようだ。

「出来れば大物を仕留めたかったが、まあ2頭も狩れば1頭分ってことで、お嬢ちゃんもこれで一人前だな!」

「これで私も一人前の冒険者ね!」

グリゴが豪快に笑い、それに釣られてカタリナも笑う。

ゴルドーとグリゴが2頭の子鹿を釣るした竿を担いで進んでいると、入り口からまるで獣の様な咆哮が響き渡る。ミグがとっさに銃を構え、タマモも刀を抜き身を低く沈める。少し遅れてカタリナも盾を構えて、獣の襲来に待ち構える。

すると茂みの向こう側から巨大な、並みの馬どころか虎よりも大きい鹿が跳躍し、竿を担いでいたせいで構え遅れたグリゴを蹴り飛ばし、その勢いのまま突進してゴルドーも撥ね飛ばす。

肉を諦めるか。あれだけの巨体ならどれだけの保存食が作れることか、諦めるのは惜しい。出来れば肉は食べれる状態で仕留めたい。だが、ここまで接近されていると身を守る方が先決だ。でも肉は手に入れたい。

タマモは一瞬躊躇したが、そんな場合ではないと懐から毒袋を取り出し、口に含んだ水と共に辺りに撒き散らした。

 

いつもの酒場のいつもの席で、タマモ達は一息ついていた。

あの後、鹿は撃退したものの、肉は毒に侵されとても食べれる状態ではなく、仕方なく角と毛皮と蹄を拝借し、かろうじて無事だった子鹿の肉は酒場で振る舞って、冒険者たちに僅かながら貸しを作ってやった。

「まさかあんな馬鹿みたいにでかいのがいるとは、危なかったな!」

顔に大きな痣を作ったグリゴが豪快に笑う。

「正直助かったよ、お嬢ちゃん。俺からも礼を言おう」

ゴルドーが軽く会釈程度に頭を下げて、タマモの前に酒の入ったグラスを置く。

礼代わりならば遠慮することもない、酒も嫌いではない、むしろ酒は好むところだ。タマモは軽く会釈し返して、酒を口に含む。口の中に甘酸っぱい酸味と芳醇な香りが広がる。

それからしばらく酒を飲み交わし、怪我の影響もあるのか一刻ほど経った頃にはゴルドーは酔い潰れ、グリゴもテーブルに肘を置いてグラスをゆらゆらと揺らし始めた。

酔っ払ったグリゴが語る。

かつて自分は興行拳闘士、いわば見世物の殴り合いで生計を立てる一座に飼われていた奴隷だった。エトリアに着いた頃、見世物の最中にやり過ぎてしまい、一座からも終われる身となったところを、ゴルドーの一家に助けられた。その後は腕っぷしを活かして用心棒や警備兵として過ごしていたが、自分の生来持っていた気の短さ故か、拳闘士として培われた闘争心がそうさせたのか、事あるごとに争いを起こし続けてしまい、居場所がなくなりマギニアへと移り住んだ。

「こいつは貴族としてぬくぬくと暮らすことも出来たんだ。それを自分たちが助けた者を放っておくわけにもいかない、っつって一緒に来ちまった。馬鹿な野郎だ」

グリゴは酒を煽りながら、いつもより微かに穏やかな調子で吐き捨てた。

「だったらこれから、マギニアに来て得をしたと思わせたらいい。あなたたちの腕なら雇ってくれるギルドもきっとありますよ」

タマモはそう呟いて、酒をぐいっと飲み干した。

 

翌日、ナインテイルズに二人の男が加わった。エトリアから来た聖騎士(パラディン)のゴルドーに流れ者の拳闘士(セスタス)のグリゴ。

冒険者ギルドの一角では豪快な笑い声が響き渡っていた。