世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

孤島のステーキハウス

上陸地点付近に作られたベースキャンプの小屋の中、タマモの目の前にはステーキという、分厚い獣肉を焼き、塩胡椒で豪快に味付けした料理がある。タカトリの国にいた頃は日々質素な、せいぜい麦飯に豆と小魚がつけば万々歳といった食事をしていたが、飛行都市マギニアに渡り、レムリアの迷宮を探索し続けて約一月、こんな豪勢な食事にありつける様になろうとは、来たばかりの頃は考えもしなかった。

その間、色々なことが起きた。熊に追いかけられたり、鹿を狩ったり、獣王と呼ばれる赤毛の獣を討ち倒したり、毒薬を改良したり、頼りになる仲間も増えた。他のギルドのに属する冒険者やマギニア軍の衛兵を助けたりもした。残念なことに帝に持ち帰るような発見はまだ何も無いが、無ければ無いでしょうがない、このまま一族のことを忘れてマギニアで暮らすのも悪くないかもしれない。等とタマモはしみじみと思いを巡らせ、次第にどうでもよくなって肉に齧りついた。

噛みついた瞬間に濃厚な肉汁が飛び出し、口の中に微かな獣臭と臭みを打ち消す香草の香り、食欲をそそらせる香ばしい肉の匂いが広がっていく。

もう以前の食生活には戻れないかもしれないな。調子に乗って体に身が付き過ぎないように気をつけないと。

タマモは穏やかな笑みを浮かべながら、さらに肉に齧りついた。

 

「いやいや、いつまで食ってんだよ」

そのまま昇天してしまいそうなタマモの気分を、ルイージャが唐突に引きずり戻す。

「せっかく肉を満喫してたのに……」

タマモが邪魔をするなと云わんばかりに目を細めて、不満そうに呟く。

だが、ルイージャの言うことも御尤もであり、冒険者は冒険するからこそ冒険者であり、迷宮に潜らない者に輝かしい明日は来ない。来たとしても今日と代わり映えしない明日でしかない。

急ぎ目に肉を食べ終えたタマモは、ナインテイルズの他の面々に声をかけて新たに見つかった迷宮「原始ノ大密林」を目指すことにした。

「次の迷宮はエトリアの世界樹に似ている、との噂です」

「だったら俺たちの出番だな」

エトリアでの暮らしが長いグリゴが名乗りを上げる。

「だが、俺たちはせいぜい低階層で鹿狩りをしたくらいしかないぞ。正直、迷宮にはそんなに詳しくはない」

ゴルドーが申し訳なさそうに続ける。

 

次の迷宮は長くなるかもしれない、タマモは改めて覚悟を決め、せめて無事に帰れるように先程食べたステーキに心の中で祈りを捧げた。