世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

帝国の騎士とウロビトの術士・4

花弁を思わせる独特の衣装を身にまとった薄く灰黒い肌をした男が、冒険者ギルドの屋根の上に腰かけ、今朝方まで雇い主だった女騎士を眺めている。彼はウロビトと呼ばれる種族の方術士(ミスティック)ロウラン、傭兵として鉄火場に身を置くことで改良に改良を加え、より実践的に練り上げられた方陣から、時として蛇縛のロウランとも呼ばれている。

かつてタルシスを救った英雄が、彼らウロビトの地に踏み入れて後、多くのウロビトは人間の世界へと足を踏み入れた。好奇心から外に出た者、未だ知らぬ知識を求めた者、単純に何も考えていない者、理由はそれぞれだったが、人間とウロビトの共存は成功と呼べる形で今も続いている。

 

人間は面白い。里を出てから色々な人間を見てきたが、清らかな者も醜い者も強者も弱者も賢人も無能も十把一絡げに人間は面白い。彼は本心からそう考えていた。

 

部下を失ったことで変化が起きたのか、帝国から離れた土地にいることで本来の素とでも言うべき部分が見えてきたのか。まさか、あの誇り高い騎士様が自分よりも一回りは幼い少女に頭を下げるとは。

「やはり人間は面白い」

ロウランは思わず口に出すほどに今の状況を面白いと感じ、軽い舞い落ちる羽根のような身のこなしで、そっと地面に着地する。

そして軽い足取りで、目の前を歩いている元雇い主と冒険者たちを追いかけた。

 

メリッサとロウランを加えたナインテイルズは、ここ数日、衛兵や冒険者が次々と消える迷宮へと潜った。潜るのは相手より先んじて動く速さを持ち、その身軽さから密林の探索に適しているタマモ、治療担当のレイチェル、部下たちの消失ポイントを記憶しているメリッサとロウラン、前線で攻防一体の動きを求められるカタリナの5人。

残りのメンバーは他のギルドからの情報に逸早く対応できるようベースキャンプ付近で待つことになった。

「では行ってきます」

タマモが少し緊張した面持ちで迷宮へと足を踏み入れる。

 

数日後、汗と返り血と泥で全身が汚れた帰還者の集団がマギニアに戻ってきた。

その中にはタマモやメリッサ達、更には行方不明となっていた他の冒険者や衛兵たちも混ざっていた。

 

宿屋で汗を流したタマモが、全身を上へ横へと伸ばしながら酒場に入ってくる。

「お嬢、今回は大変だったな」

ゴルドーとグリゴが酒瓶を運びながら笑いかけてくる。タマモはグラスを打ち鳴らして、ぐいっと飲み干し、ようやく一息ついたのか、ぐったりとした様子で椅子の背に体重を預けた。

「それでお嬢、迷宮に竜がいたってのは本当なのか?」

「いましたよ。ついでに軟体の化け物と背びれの生えたトカゲと牙の長い虎と歩く椰子の木までいました」

タマモはくたびれた顔でグラスに酒を注ぎ、ゴルドーはそんな化け物と対峙出来るものかと渋い顔を浮かべ、グリゴはそいつは大変だったなと豪快に笑った。

竜退治の話が来る前日のことである。