世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

水兵

桜の立ち並ぶ迷宮を突破したタマモは、探索中に見つけた水兵の所有物であろう遺品を渡す為、海の一族の駐屯地へと向かった。

「問答無用で襲い掛かって来るやもしれぬな」

帝が不敵な笑みを浮かべながら、そんな物騒なことを口にする。本人が是が非でも行きたいと譲らなかったのが理由だが、この男を同行人に選んだのは間違いだったのかもしれない。

「先に手を出さないでくださいよ」

「無論だ。敵地で余計な火種を撒き散らすなど三下のすることだ」

本当にわかっているのだろうか。タマモは不安を抱えたまま、見張りの水兵が視認出来る距離にまで近づいた。

「帝はここでお待ちください」

「いいのか。小娘ひとりでどうなるかわからんぞ」

「小娘ひとりだからいいんですよ」

少なくとも帝と一緒に行くよりは遥かに安全です、その言葉を呑み込み、タマモは極力敵意を感じさせないように敢えて音を立てて、ゆっくりと水兵に近づいていく。海の一族が雇っている冒険者がまだ若い、どんなに多く見積もっても三十路には指先すら届かない女性であることから、一定の統率は取れていると予想はしていた。いざという時に逃げられるよう、袖の衣嚢に撒菱や毒薬は用意してあるが。

水兵は急に襲い掛かるような事こそ無かったが、マギニア側の冒険者を受け入れることはなく、あくまでも敵対者の態度は崩さずに遺品を受け取り、今すぐ帰るようタマモに告げた。

わざわざ届けたのに、こうも不躾に追い払われるのも気分が悪い。しかし敵地であること、マギニア冒険者であること、海の一族とは今後友好的な関係を築きたいこと、怒りを鎮めざるを得ない理由を幾つも思い浮かべて、タマモはあくまでも表情を変えずに水兵たちの前から立ち去った。

 

駐屯地から離れた森の中で帝と合流し、苦虫を噛み潰したような顔をしながら、タマモは手近な樹木を思い切り蹴り込んだ。何度か樹木を足蹴にして、ようやく頭にかかっていた靄を晴らしたタマモは、マギニアの方向へと足を踏み出す。

「そんなに腹が立つなら、今から暴れてきたらどうだ? あの水兵、見たところ体格こそ屈強だが、そんなに腕が立つようには見えなかったぞ」

「しませんよ。彼らの航海技術は、いざという時に利用したいですから」

帝は奪うことで自分の意思を押し通して来たのだろうが、タマモは奪うことは最後の手段と考えていた。それに海の一族の頭領である航海女王とはまだ顔も合わせていない。下っ端同士の小競り合いなど馬鹿馬鹿しくて起こす気にもならない。

「さあ、お腹も空きましたし、さっさと帰りましょう」

タマモは隣を歩く帝にそれだけ告げて、帰り道を進む足を速めていった。