世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

占星術師

海都アーモロードの占星術師ティコ・ブライエン14世は立ち上がった。

星の巡りが悪いのか、すべてを星の巡りだけで決めたせいなのか、家督を継いでから今日まですること成すことすべてが裏目に出て、ついには先祖より受け継いだウラニブルグ天文台の維持費を払うことも出来なくなり、一角千金を夢見て飛行都市マギニアに乗り込んだ。しかし星の巡りが悪く、上陸から今日まで大した成果を上げることも出来ず、せっかく作ったギルドもすっかり、踏破後の迷宮で素材を拾って日銭を稼ぐような有象無象の連中の中に埋もれてしまった。

彼女は優れた占星術師である。特に三属性星術の腕前は、アーモロードの誇るシグナル三姉妹やスターブラザーズにも引けを取らない。そのくらい高い評価を得ていた。

しかし高い星術の腕に反比例するかの如く、世渡りや経営といった処世術は素人以下、おまけにその力は大は小を兼ねる思想の下で暴走しがちであり、むしろ頼むから呼吸以外は何もしないでくれと土下座される程に絶望的で、そのため彼女を疫病神ないし破壊者と評する者もいる。

そんな現実に絶望していたティコだが、夜な夜な行っていた星占いの結果、シノビの若い女が吉兆をもたらすと出、今こうしてタマモの前に姿を現したのだ。

「聞けば君たち、新しい迷宮に挑んでいるそうね」

水中迷宮「海嶺ノ水林」、マギニアが海の一族を出し抜くために調査中の迷宮だ。原理はわからないが海の中に空気があり、かつてアーモロードで大量の衛兵を失った迷宮にも似ているという。

ティコはかつて家督を継ぐ以前、海都の冒険者としてその迷宮に挑んだこともあり、その知識を元々高い自負に加えて、自信満々の表情でタマモに話を持ち掛けた。

「私も連れて行きなさい。私の星術と占星術で、君の冒険を成功に導いてあげるわ」

結構です、と断っても勝手についてくるのだろうな。タマモはそんな予感を確信に近い域で感じながら、目の前の占星術師の顔を覗き込んだ。その顔はあくまで自信に満ち溢れており、どうして有象無象に埋もれている中でここまでの自信を持てるのだろう。爪の垢でも煎じて飲ませてもらえばいいのだろうか。

「実力を疑ってるようね。君達のような高名なギルドならそう思うのも仕方ないわ。ならばひとつ、私の術を見てもらうとしよう」

ティコは掌の中に大気中に漂う元素(エーテル)を集結させ、巨大な炎の塊として顕現させた。炎は弓矢にも劣らぬ速度で前方へ射出され、目の前にあった大樹を瞬く間に焼き尽くし、そのまま森を広範囲に焼き払った。その火力は確かに凄まじかったが、あまりの被害に探索司令部から飛んできた衛兵長にこっぴどく怒られ、最終的にはティコが両膝を抱えるように背中を丸めて座ってしまった。

「どうせ私は駄目なんだ、ちょっと調子に乗ったらすぐこんなことになる。アーモロードの元老院を半壊させた時も、冒険者ギルドを爆破した時も、深都の城門を吹き飛ばした時も、港に現れた海賊ごと交易船を沈没させた時も、そんなことするつもりはなかったのに」

タマモはその言葉の節々に現れる被害の数々に背中を濡らしながら、ついには嗚咽を漏らし始めたティコの肩に手を置いた。

彼女の力は使い道を間違わなければ強力な武器になる。ただ市街地や人里近くでは絶対に使わせてはいけない代物だが。

「ねえ、今挑んでる迷宮が銃弾も通さないような硬い生物が多いの」

「それなら私の力の出番ね」

ティコは夜が明けたかのように顔を明るくして、胸に手を置き、タマモに自信に満ちた顔を向ける。

「このティコ・ブライエン14世に任せるといいわ」

この後、試しに放った星術で感電した大量の魚が浮かび上がってくる事件が起きて、再び衛兵長に怒られたことは言うまでもない。