世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

忍術

時には休暇も必要だ。一杯の酒を飲む時間の為に人は働き、働いた後の酒は格別に美味しい。そう語ったのは一体どこの誰だったか。

先日、命辛々迷宮から戻ったタマモは、この日ぐらいはゆっくり過ごそうと宿屋の一室で朝から贅沢に二度寝を楽しんでいた。

それに幾つか成果は挙げた。海の一族関連らしき書物をギルド長兼マギニア軍司令代行のミュラーに提出し、その調査結果が出るまでの間、タマモ達だけでなく他の冒険者も一時の猶予を得たのである。もちろん今こそ他のギルドより先にと功を焦る働き者もいれば、休める内に休めといつも以上に怠惰に過ごす怠け者もいる。

タマモは働き者の部類であるが、今日に限っては怠け者でいたい、そう決めて今を全力で怠けている最中であった。

「ねえ、タマモ。暇だったら私の書斎に来てみない?」

同じく暇を持て余していたティコが、誘いの言葉を掛けてくる。

このまま怠けるのも退屈過ぎる、そんな気持ちが湧き始めていたタマモはふたつ返事で誘いに乗り、マギニア市街地の居住区に建てられた小規模な図書館へと足を運ぶことにした。

建物の規模こそ小規模ながらも本棚が立ち並び、さらに所狭しと書物が詰め込まれた書庫を何部屋も有するその図書館は大量の書で溢れ、その中ではかろうじて人が座れる空間を保った部屋にタマモ達は足を踏み入れた。

「ここはミズガルズ図書館から派遣された調査員達が建てたんだけど、私が持ってきたウラニブルグ天文台の蔵書を300冊ほど貸してあげたら、快く一室を書斎として提供してくれたの。この部屋にあるのはまた別の私厳選の書物だけどね」

「よくそんなに持ってこれたね」

タマモは素直に感心しつつ、果たしてその中の何冊が自分の役に立ってくれるだろう、と考えていた。

ティコはタマモにぴったりの本がある、と書物の山から迷うことなく一冊の本を掴み、山が崩れないように細心の注意を払いながら抜き取る。もしかしてどこに何があるか全て覚えているのだろうか、そんな恐ろしいことを思い浮かべながらタマモは手渡された本に視線を落とした。

それは忍術について書かれた書物で、かつてシノビの技と星術を融合させた遁術の開祖長門の記した『萬河集海』、タマモを含む狐狗狸の三忍とは全く異なる系統を歩む異種のシノビの技術が山のように記されていた。

「なんとなく存在は知ってたけど、まさか本物を読める日が来るとは」

タマモはシノビの技を無闇矢鱈に使うのには抵抗を覚える類だが、技や知識を会得することに関しては一切の努力を惜しまない性質でもあった。ましてや一族の専門分野にない遁術ともなれば、興味が湧かないわけがない。

タマモは熱心に食い入るように書物を読み、そのままティコに導かれるがままに星術の理論書や元素の構成理論、実践的な三属性星術の指南書まで、その日は一日中書物に埋もれて過ごしたのであった。