世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

皆伝

ティコの書斎からの帰り道、冒険者ギルド裏の空き地を通りがかった頃、タマモの目にナインテイルズの面々が互いにあれこれ教え合っている姿が飛び込んできた。

ルイージャがロウランに剣の投げ方を指南していたり、レイチェルとヘルベルトがメイスの打ち込みを確認し合っていたり、グリゴがカイエンに体捌きと呼吸法を教わっていたり、ファーマーの双子までもがヴァルバラに槍術の手ほどきを受けたり、と皆が皆、揃いも揃って何やら新しい技術の習得に励んでいる。

「皆して何してるんですか?」

「新しい技の習得だそうだ」

ただひとり木陰に寝転がって見物していた帝が皆に代わって答える。

先日、水中迷宮で発見した書物の中には、全く異なる武器を同時に使いこなし、異系統の剣術を巧みに操る過去の英雄たちの記録が残されていたものもあった。どうやら皆その記述に可能性を見出したらしい。

「あなたは混ざらなくていいのですか?」

「俺は必要ない。必要な技はすでに会得している」

帝は寝返りを打ちながら、自分には必要ないとも取れる言葉を発する。

タマモは知らないが、この世にはすでに他系統の技を振るう術を身につけた皆伝と呼ばれる者も存在している。海都アーモロードの海底にある深都には人間の潜在能力を引き出す術が残され、タルシスにはイクサビトと呼ばれる武に秀でた獣人が記した双牙武典なる書物も存在している。帝はかつてタカトリの王であることを隠して深都へと赴いた際に、機械の体を持つ王から術を授かっていた。

「お前も混ざってきたらどうだ」

帝が高みから物申すような口調でタマモに勧めるが、タマモは下からこっそり玉座の足を引き抜く様な笑みを浮かべて返す。

「お生憎様ですが、私もすでに会得しています」

タマモは掌の中で小さく火種を生み出し、指で弾いて帝の足元にぽとりと落とした。

帝はほうと思わず声を発し、静かに縮んでいく火種を眺めながら、感心させられてしまったことを不服に思ったのか、タマモの方を向き直って不満そうな顔を見せる。

「何か問題でも?」

「無い。無いのだが、せっかく勧めてやったのに無用とされれば面白くはない」

さっき自分の勧めに同じことを返したくせに。タマモは口には出さなかったが、呆れた顔で帝を見下ろした。

しばらく同行して気づいた事だが、この男は帝という立場に立っていなければ、やや自尊心の強い性格に難のある、一方で剣に於いては右に出る者がいないかもしれないと思わせる腕前の、中身は年相応に大人げない青年でしかない。それでもタマモからすれば自分よりひと回り以上年長のはずなので、こんな小娘に張り合わないでください、と思わないではないのだが。

タマモは仕方ないと諦めて、仲間達の特訓に混ざることにした。

一方で帝は面白くない様子のまま、寝転んだ姿勢を解かずにそのままうつらうつらと舟を漕いでいたのであった。