世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

タマモと王子・1

新しく発見された廃墟でタマモは奇怪な生物を見かけた。

それは黄色く鈍い光を発する液状の金属で、人間の足音或いは体温か、何かしらの気配に反応して距離を取ろうと地面を這いながら離れていく。これまで色々な獣や生物を目にしたが、執拗に追い掛けて来るもの、縄張りの中で追うもの、人間の動きなど我関せずと規則的な周回を繰り返すものばかりで、こんな風に逃げる生物を目にするのは初めてかもしれない。そもそもあれは生物なのだろうか。意思があるのか、それとも何者かが仕込んだ罠なのか。

タマモは見れば見る程、興味をそそらせる異形をまじまじと見つめた。

そのタマモの横顔と目の前の生物と交互に視線を向けながら、ヘルベルトは小声でぼそりと問いかけた。

「タマモさん、もしレムリアの秘宝を手に入れたらどうします?」

なにを今頃、とタマモは一瞬怪訝な様子を浮かべたが、そういえばこの男にはそういった話をしていなかった、ことを思い出した。

実はタマモも決めかねていた事だった。一度は成果を持ち帰り、その結果というか副産物というべきか、帝が玉座から降りたことでタマモの首は繋がった。任務は継続しているものの、それこそタカトリの国にとって利益となるものであれば何でもよいのかもしれない。例えば巨大な金塊でも、希少な薬草でも、マギニアを飛ばしている飛行技術でもだ。

となればマギニア軍や海の一族が探し求めるレムリアの秘宝は、どちらかに渡しても構わないし、それこそ先に取られても問題ないのかもしれない。帝やカイエンは不甲斐なさを叱るかもしれないが、マギニアには世話になった借りもあるし、海の一族には協力してもいいと思わせる航海技術がある。

「そうですね、特に決めてません」

タマモは正直に、なおかつ真意を悟られない答えを返した。

ヘルベルトは驚きを隠せずに目を丸くして、そのまま数秒固まってタマモの顔を眺めていた。

「そうですか」

硬直を解いて、ヘルベルトがぼそりと呟いた。そして少し離れた場所で生物を眺める雲流斎の姿を横目に捉え、そっとタマモの肩に手を置く。反射的にその手を払おうとしたが、ヘルベルトが思いのほか真剣な表情をしているので、どうかしたのか、と疑問を投げる。

「奴らに気をつけてください」

奴らとはチェザーレと雲流斎のことだろうか。確かにどうにも怪しいところはあるが、冒険者など皆一癖も二癖もあるものだ、と特に気に留めてはいなかった。

言われてみれば腑に落ちないところはあった。衛兵が上に秘密にしてくれと申し出たことだ。マギニアの衛兵は軍の指揮下にあるものの、一定の自由を許されているのか、冒険者に気軽に頼みごとをする者も多い。わざわざ上に秘密にする理由もなければ、それ以前にミュラーや衛兵長も迷宮に潜るギルド数を増やすことを咎めたりはしないだろう。

ついでに言えば、わざわざ同行する必要など無いのだ。特にチェザーレは自前のギルドを率いている。その気になれば彼らだけでも迷宮を進めるだろう。それに別々に探索して情報を共有する方が効率がいい。これも腑に落ちない。

しかし何故ヘルベルトがそんな忠告をしてくるのか。その点においてもタマモは腑に落ちていなかった。

「ヘルベルトさん、なにか隠し事をしていませんか?」

タマモは目を細めて、隣の男との間でだけ聞こえる小声で呟いた。