世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

帰還航路・3

海の一族の水兵長ジールとゴンザロと合流した一行は、順調な航海を続けていた。今日は何時になく波が穏やかで、こいつは楽勝だな、とゴンザロが笑い、油断は禁物だとジールが諫めた。そんな穏やかな海上を眺めていたタマモは、水平線の向こうに巨大な黒い影を微かに捉えた。

「ドレーク船長、あっちに何かいます」

「なんだなんだ? ちっ、こいつはよくねえな」

ドレークが黒い影を見た瞬間、思わず舌打ちをする。そして大急ぎで大砲の準備をするように近くの船員に伝え、先程までの穏やかさとは一変、まるで海戦でも始まるかのような慌ただしさが船の上を支配した。

「全員気をつけろ、ペンドラだ!」

ペンドラ。かつてアユタヤの漁師から聞いたことがある。漁船や軍艦、海賊船と種類を問わず何十隻もの船を沈ませた巨大な勇魚。かつて海都の冒険者により仕留められたというが、どうやら同程度の個体がまだ存在したらしい。

勇魚ペンドラがドレーク達めがけて、まるで津波のような勢いで迫ってくる。船員達は大砲を次々と発射するが、まるで羆に小石をぶつけている程度にしか効果がなく、勇魚の勢いは衰える気配がない。

「ドレーク、あれを使おう!」

「仕方ねえか!」

トカシキとドレークが船首に駆け上がり、巨大な銛のついた大砲を左右に動かしながら勇魚へと照準を合わせる。捕勇魚砲、北の大陸が開発した対巨大勇魚用の特製の銛。海都の冒険者もこれを使ってペンドラを仕留めた。スミトモがタマモにそう説明した。

「だが、そうそう当たるもんでもないぞ」

オーハの不安そうな呟きを耳にしたタマモが、自分に考えがあると告げて、ペンドラの真正面に立った。タマモの手には獣を寄せつける特異な音を発する鈴が握られ、チリチリと鳴りながらペンドラの気を引き付けていく。タマモが気休め程度にでもなればいいと含み針を放つと、偶然なのか幸運にもペンドラの片目に刺さり、一瞬だけ明らかな隙が出来た。

ドレークはその隙を逃すような盆暗ではない。即座に巨大な銛を発射し、ペンドラの頭蓋を貫き、突如現れた難関を無事に切り抜けることに成功した。

「やるじゃねえか、お嬢ちゃん!」

「だから言ったろ、この子は役に立つってよ!」

トカシキとオーハ、さらにスミトモやイバート達、船員達に海の一族の水兵達もタマモに駆け寄っていく。

 

その日はペンドラから切り出した肉を焼いて、飲み過ぎないようにひとり一杯だけの質素だが海上で出来る限り贅沢な酒盛りを行った。

レムリアの駐屯地がその目に映るとこまで近づいている。タマモは勇魚の肉を頬張りながら、ようやく戻ってきたのだと安堵の息を吐いた。