世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 3周目 赤髪の暗殺者

思い付きでつづる妄想マスタリーも3周目ですのん

密航者

タマモが降り、頼まれていた積み荷を降ろし終えたドレークの船が、荒れた大海原へと遠ざかっていく。海の一族の水兵長ジールとゴンザロは海岸に降ろした荷を水兵達に運ばせながら、ふとその荷の中から得体のしれない気配を感じ取った。

「なあ、兄弟。なんかあの樽、怪しくねえか?」

「奇遇だな。俺もそう思ってたところだ」

ジールが樽に手を掛けようとした瞬間、樽の底が抜けて、なにやら小さい影が途轍もない速さで走り去っていく。しばらく追いかけた水兵長だったが、船の上では熟練の身のこなしと卓越した平衡感覚で機敏なものの、陸に上がれば重たい筋肉が邪魔となり、走れば走るほど距離を開けられ、ものの数分もしない内に見失ってしまった。

「密航者に出し抜かれるとは……俺たちも、まだまだだな」

ぜえぜえと夏場の犬のような荒い息を吐きながら、水兵の威厳を少々傷つけられたジールが舌打ちをした。

 

ところ変わってマギニアの街、いつもの酒の匂いと潮の香りが混じった、どこか懐かしさを感じさせる街の匂いに、タマモはようやく帰ってきたのだと実感した。

皆には随分心配もかけたことだろう、カイエン達は順調に迷宮を探索しているのだろうか、それとも揃いも揃って我の強い彼らのことだ纏まるものも纏まらずに探索が難航しているかもしれない。タマモはあれこれと考え得る限りの事態を想定しながら、冒険者ギルドの扉を開いた。

「あれ、タマモじゃない。帰ったんじゃなかったの?」

「いや、確かに帰ったはずよ。私も見たもの」

メリィとアリィの双子のファーマーが、元々丸っこい目を更に丸くして、まるで幻でも見るような目でタマモを凝視する。視るだけでは飽き足りないのか、タマモの頬を掴んで引っ張ったり、腕を取って適当に振り回したり、もしかすると双子なりに喜んでいるのかもしれない。タマモは片足を下から掬う様に取られて、床に転がされるまでは穏やかな顔でされるがままでいた。

タマモが握った拳の下側面で双子の頭を打ち、ようやく幼子に捕まった人形のような揉みくちゃに玩ばれる状態を脱した。

「あいたたたた」

それはこっちの台詞だ。タマモは心の中で毒づきながら、半ば工房として独占していた冒険者ギルドの一室へと向かう。

「それで、いつ帰ってきたの?」

「というか、どうやって帰ってきたの?」

タマモは双子にこれまでの経緯を説明しながら、ようやく辿り着いた部屋の扉を開き、残してきた諸々の道具が無事でいるか、じっくりと隅から隅へと部屋を見渡した。

「あ、やっと帰ってきた! ねえ、タマモ。この町、マギニアっていうんだっけ? すごいね、外国人だらけでびっくりしたよ!」

部屋の窓に腰掛けた袴姿の少女がタマモに興奮冷めやらぬ様子で話しかけてくる。

タマモは夢でも見ているのかと自分の目を疑い、すぐにそれが現実の者だと気づくと、少女の首根っこを掴まえて、なんでお前がここにいるのだ、と問うた。

「なんで小梅がここにいるの?」

「こっそり着いてきたから!」

月遊楼の高級芸妓付きの禿であり同年代の友人でもある小梅のあっけらかんとした答えを聞き、さては荷物と一緒に紛れ込んでいたのだなと勘付いた。

「花街から出たの初めてだけど、全然違う町なんだね」

「初めて外に出たのが密航で、辿り着いたのが絶海の孤島って」

「すごいでしょ」

小梅は親指を立てて、タマモに能天気な笑顔を投げつけた。