世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 3周目 赤髪の暗殺者

思い付きでつづる妄想マスタリーも3周目ですのん

奪取・3

迷宮の中はわずか数秒で汗が滝のように流れる暑さで、その熱の発生源である岩の塊のような物体を壊せば、体の芯から凍えるような急激な温度低下が生じる、確かに体調を崩しても何の不思議もない環境だった。

出発前に双子に調達してもらった毛皮の外套を着込み、階を降りれば脱ぎ、熱源を壊して再び着込む。焼け石に水程度の対処法だが、それでも全く手を打たないよりは余程効果がある。タマモ達はあまり急がず、焦らず、温度に体を慣らしながら少しずつ歩を進めて、地図の消失地点に辿り着いた。

「よし、引き上げましょう」

目の前では冷気で眠るようにおとなしく身を丸めているものの、途方もない大きさの炎を纏った大蜥蜴が道を塞ぐように居座っている。おそらくこの状態だと釣り出すのは難しいだろう、しかし活動的になる温度帯では火竜後方の水源が邪魔となり、先に進めずに挟み撃ちにされる。

それがわかっただけでも十分な収穫である。タマモ達は早々に引き上げることを選び、大蜥蜴を刺激しないように静かに迷宮を抜け出した。

 

「炎を纏った蜥蜴ね。そんなのが本当にいるなんて、私もついていけばよかった」

戻ってきたタマモを出迎えた小梅が不満そうな声を上げる。

「でもよお、お嬢。あれはどうにか出来るもんでもねえだろ」

ルイージャが横やりを入れて、グリゴとゴルドーも同意の意思表示として首を縦に振る。

「あたしたちには火力が足りねえ。あたしも兄貴もおっさん達も獲物が獲物だ、あの巨体には小さすぎるし、投剣の間合いは当然あちらさんの間合いの中だ」

「ボクの槍なら多少効いてくれると思うけど、あの大きさにどれだけ効果があるかな」

「俺は論外だな。頭を殴ろうにも拳が届きそうにねえ」

確かにあれ程の巨体だ。これまでも巨大な化け物はいたが、あくまで爪や牙で襲い掛かってきて、流石に火は吹かなかった。おそらく冷気で丸まっていても、身の危険を感じれば火を吹くに違いない。ならば如何に火を吹かせないか、或いは火をどうやって防ぐか。

「せめて奴の口を閉じれたらな」

ゴルドーさん、それです」

タマモは少し出てくると言い残して飛び出し、以前よりも行動力に溢れてる姿に残った皆は安心感と一抹の危うさを覚えていた。

 

「というわけで、貫通力の高い、出来れば岩でも貫き通せる刀か短剣はないですか?」

ネイピア商店の店主は、そんな便利なものがあるわけなかろう、と言い返し、しかしその直後に目をにやりと輝かせて、タマモに一振りの小太刀程度の長さの短剣を見せる。

「お主は運がいい。これは以前、お主たちが持ち込んだ素材で作ったものでな、相当上質な素材だったのであろう、工房の連中も目を輝かせて作っておった。これならば、そうじゃのう、百聞は一見に如かずじゃ。そこで少し見ておれ」

ネイピアは短剣を抜き、工房の片隅に置いてあった両手で掴み切れない程の金属の塊に突き立てる。腕の振りも素人同然、腰も入っていない突きでは、本来であれば手を痛めて終わりだ。しかしまるで豆腐に釘でも刺すかのように簡単に突き刺さり、金属の塊は真っ二つに割れた。

「どうじゃ、すごいであろう。素人のわらわでこれじゃ、お主が使えば、その噂の大蜥蜴とやらの顎も貫けるやもしれんのう」

ネイピアはにやりと笑いながら算盤を弾き、タマモの目の前に数字を突き出す。恐ろしい金額であったが、それは同時にこんな桁違いに高い武器は当分売れることもないだろう、と安心させる値段でもあった。

「ネイピアさん、ちょっと待っててもらっていいですか?」

「勿論じゃ。銭を貯め込んで、また来るがいい」

ネイピアは短剣に予約済みと紙を貼って、大儲けじゃと呟き、小躍りでもしそうな様子で茶を入れ始めた。

それとは対照的にタマモは相当苦労しそうだな、と金策方法を考えながら、自分の財布と算盤の数字を交互に見比べた。