世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

忍二人・1

回復したとはいえ全盛期と比べると体が重い。いや、もう何年も全盛期とは程遠い老体の域に踏み入れつつあるが、こうも調子が戻らないとは。

そんな下らない未練を脳裏に過らせながら布団に横になり、呆然と空を眺めているカイエンの視界に、数週間ぶりに見るシノビの少女の顔が割り込んでくる。

「狐火のタマモ、遅ればせながら帰って参りました」

「公儀隠密にはならなかったのか?」

「はい。あのまま投げ出すには心残りが多すぎましたので」

カイエンはふっと頬を緩め、ならばよい、と呟いて、上半身をゆらりと起こす。やはりよくはない。体を起こすだけで気がひとつ欠けるような感覚に陥る。

「タマモよ。国からの主命を断ったからには、もうお前は雇われの身ではないし、わしもお前の監視役ではない。だからこそ、お前に帝のことを頼みたい」

タマモは目の前の老剣士の顔を注視しながら、気が抜けているのか弱っているのか、こんな頼み事などらしくないなと思った。自分の知っているこの人なら、主の身は自分で守り通す、そういう心構えでいるはずだ。

「お断りします。あの方にはそんなこと無用でしょう」

実際、帝の戦力は図抜けている。限りなく不死に近い体に、磨き上げられた名刀の様な技の冴え、傲岸不遜で酔狂な性格。自分などがお守りすると申したら、その場で首を刎ねるかもしれない。目下の者に一発殴られるのは耐えられても、自尊心を傷つけられることには耐えられない、そんな人物だとタマモは考えていた。

「それに腕はキリカゼ様の方が上です」

「だろうな。技はお前より一歩も二歩も先を行っている。だがそれでも、わしはお前に頼みたいのだ」

シノビの囲いを破ったお前だからこそ、カイエンはそう言いかけて、それを口にするのは止めた。自分もまた国という忠義という囲いに捕らわれたままの老人に過ぎない、それを嫌というほど思い知らされるからだ。

「カイエンさん、病は気からと言います。心が弱れば体も変調を来たす、と狗のシノビが言ってました。ですので、これをどうぞ」

タマモは装束の袖から丸薬を何粒か取り出し、カイエンの枕元にそっと静かに置いた。

「これは狗の一族に伝わる強心剤です」

気持ちが弱っているから、そんなことを言い出すのだ。

 

外に出るとキリカゼが訓練の一環なのか、片足の親指の先だけで石の上に立ち、そのまま体をほとんど動かさずに顔だけを捻ってタマモに視線を向ける。

「タマモ殿、今からひとつ手合わせ願いたい」

どういう風の吹き回しか。自分と手合わせしたところで、それほど得る物があるとは思えないが。タマモは訝しむ心情を顔に出しつつ、素振りにでも使っていたのであろう稽古用の木刀を一本手に取り、いつでもどうぞ、と云わんばかりに身構えた。

キリカゼも同程度の長さの木刀を手に取り、片腕で体を覆う様に構えた。