世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 4周目 天球を抱える星術士

思い付きでつづる妄想マスタリーも4周目ですって奥様

忍二人・2

剣術も流派が違えば、得意とする構えも大きく異なる。それはシノビも同じことで、タマモは身を低く沈めて、武器を体の後ろで構えるのが基本として叩き込まれている。武器の初動の遅れよりも身のこなしと行動の幅広さを重要視し、また攻める時には体を捻り回転を加えることで非力さを補うことも出来る。

一方、キリカゼは武器を体の前で持ち、片腕で半身を覆う風魔一党の好む構えで、まず武器を相手よりも先に撃ち込む先手必勝と刃を体より前に置くことで心理的に相手の動作を制限する後手不敗を重視している。

先に動いたのはキリカゼだった。逆手に持った木刀を振り回し、タマモが後ろに下がるのに合わせて、もう片方の手に持ち替えて上段から斬り込む。タマモは下がる際に重心は前に残し、木刀の軌道が自分の前から外れた瞬間に合わせて前進し、体を捻って降ってくる木刀を頭上で受け止めた。

キリカゼの前蹴りを身を捻って避け、その足を掴もうと手を伸ばしたところを平手で突かれ、体勢が崩れたところに木刀が垂直に振り下ろされる。

タマモが突かれた反動で後ろに下がり、木刀が目の前を上下に通過するその動きに合わせて、自分の背中から大きく弧を描いて振り下ろす。当然こんな大振りが当たるわけがない、キリカゼが難なく避けた直後に、木刀を右から左手に持ち替えて、そのまま真っ直ぐに突き込む。

こんな具合に互いに相手の出方を見ながら、自分の基本技術に応じた形で応え、互いの手の内を教える様に半刻程の時間、木刀を交わし続けた。

 

「タマモ殿、某が言うことでもないが、先日よりも随分動きが良いでござる」

「あの時はなにがなんでも勝たなければ、と気負い過ぎてましたから」

手拭いで汗を拭くキリカゼの問いに、同じく水を被って顔を洗いながらタマモが答える。確かに今日はあの時よりも身軽に動けていた。結局1本とる間に3本取られてしまったが、それでも前回ほど無様な勝負運びにはならなかった。

とはいえ、刀剣での勝負となると、やはり七三或いは八二でキリカゼが上回る。こんな稽古が目の前のシノビの役に立つのだろうか。タマモは顔を拭きながら、やはりまだ意図が読めないといった表情で、キリカゼの顔を見上げた。

「某はあくまで現帝様に仕えるシノビでござる。故に何時如何なる場合に国に帰れと言われるやもしれぬ。タマモ殿がレムリアに戻ってきたことで、猶更そう考える者もいるでござろう。だから、タマモ殿には拙者の技を少しでも知っておいて欲しいのでござる」

成程、合点がいった。カイエンもそれを危惧していたのかもしれない。

「もちろん前帝様にも忠誠を誓った身、あの方の目的半ばで放り出すつもりもないでござるが」

「ですよね、あなたならそう言うと思っていました」

キリカゼのつけ足した言葉を聞いて、タマモはほっと表情を緩めながら応え、

「てっきり御二人はそういう間柄なのだと思っていましたので」

と正直に抱いていた感想を告げた。自分に向くものを感じ取る情緒は年相応に未熟であるが、花街で様々な人間を見てきたことで他人を見る目はそれなりに培われている。それに目の前のシノビの忠臣ぶりは月遊楼にも聞こえる程に有名であった。故にそういう噂が流れたことも事実がどうであれ過去にあった。

肯定も否定もせず、ただ木刀を片付けるキリカゼを見ながら、

「今後も御指南お願いします」

タマモは少しでも腕を磨き、レムリアの秘宝を誰に渡すか自分で選ぶ為にも、目の前のシノビから技を盗もうと決めたのであった。