世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 3周目 赤髪の暗殺者

思い付きでつづる妄想マスタリーも3周目ですのん

呆と執・1

タマモは夜の森を歩きながら、半刻程前に告げられた帝の言葉を思い出していた。

もしやあれは国作りの為の部下を求めていたのではなく、人生の連れ合いの様な存在を求めていたのではないか。だとしたら余計に御免だ。齢十五にして将来を汚泥に捨てるくらいなら、タカトリの国に戻って現帝に頭を下げて、一生冷や飯を食わされる生活を送るか、どこか他所の国に移住して細々と暮らす方がまだ希望がある。

そうだ、メリッサに頼んでタルシスに士官させてもらおう。ミグに頼んでカレドニアに雇ってもらうのもいいかもしれない。海の一族に打診してどこかに移住させてもらうのも悪くない。自分の腕と知識を過信するわけではないが、シノビの技術はそれなりに価値が付くに違いない。

他に選択肢が降って湧きそうな状況で、あの男と一緒に残る選択など取るはずもない。

タマモは今一度冷静に振り返り、断ったことを称賛したい気持ちを募らせた。

 

タマモが戻り次第酒場に向かおうと歩調を速めていると、獣道の傍らに薄汚れた身成の老人が横たわっている場面に遭遇した。怪我人か、それとも酔っ払いか、呆けて徘徊しているのだとしたら始末に負えない。しかしこのまま放置して死なれでもしたら後味が悪い。せめて怪我人か酔っぱらいであれ、と祈りながら、老人に近づき声を掛ける。

「おじいさん、どうされました?」

老人は覇気のない表情でタマモを見上げると、

「おお、ドロテーア。どうしたのだ、今日は教会に礼拝に行く日だろう。早く支度しなさい」

顔を僅かに明るくして優しく語り掛けてきた。

どうやら誰かと、おそらく孫娘か誰かと間違えているようだ。タマモは強い口調にならないように気を払いながら、

「あの、人違いです」

しかしはっきりと否定した。

「何を言っておるのだ、ドロテーア。お前はドロテーアだろう。いや、違うのか。ではお前は誰だというのだ?」

老人が混乱したように視線を左右に揺らしながら、理解が追いついていない様子でタマモの顔を覗き込む。呆けた老人の世話など経験のないタマモも、さてどうしたものかと途方に暮れながら、マギニアの市街地まで連れて帰るべきか思案する。

「タマモ、どうかしたのか?」

そんな場面に、夜の森で鳥を撃っていたミグが通りがかり、老人の顔を見た途端に猟銃に弾を込めて、そのまま銃口を老人の眉間に向ける。

「ウィルヘルム・ゴダール……お前がマギニアにいることは知っていたが、こんなところで出くわすとはな」

普段、誰よりも冷静で物事に動じないミグからは想像もつかない程の驚きと焦り、それを真っ黒く塗り潰す様な殺気を纏い、猟銃の引き金に指を掛けていた。