世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 3周目 赤髪の暗殺者

思い付きでつづる妄想マスタリーも3周目ですのん

狐火のタマモ

「ただいま」

「おかえり、とでも言うと思ったのかい?」

大女将が煙管で眉間を小突く。芯にまで響く様な鈍痛に呻き声をあげながら、しかし堂々とした様子で居直って、レムリアから持ち帰った中で手で抱えられる大きさの発見物と、具体的な効果から使い方の提案までを束にした羊皮紙を突き出すと、大女将は目の色を変えて書き記された文を読み耽った。

「なるほど、中々大したものじゃないか。特にこの浮石は気に入った。城下から港までの各区画を碁盤目状に動く浮遊回廊に、浮石を利用した高官向けの出張芸妓小屋、これが実現したら現帝に払った銭なんざ半年で取り戻せるよ」

大女将が驚きを隠せない表情で羊皮紙から目を上げて、そのまま郊外の港の方に視線を向ける。港に停泊している巨大船が、花街の中心にある月遊楼からも確認できる程に大きく、その船隊を佇ませている。

「それで肝心の品はあの船に乗ってるわけだね」

「そうだよ」

「さて、ちょいと人手が欲しいところだね。シラチゴと刑部にも声を掛けるとするかね。あいつらも一枚咬ませたら、狐狗狸の三忍の地位も少しは上がるだろうよ」

大女将は新しく雇った禿に使いを頼み、タカトリの国内ではまず目にすることのない稀少鉱石や植物を眺めながら、久しぶりに大仕事の匂いがすると気分を昂らせて、年に似合わない速さで港へと歩いて行った。

 

ふたつのそう大きくない人影が港へ向かっていく。

「それで、タマモは一緒に帰ってきたのかい?」

「それがね、大女将。実は私にもよくわからないんだ」

「なんだい、それは?」

小梅は頬を指で引っ掻きながら、海の一族の駐屯地で荷物を積み終えた後、タマモがそのまま姿を消したことを告げた。一応船の出る時間まで辺りを探したものの見つからず、今回は仕方なく独りで帰ってきたのだ、とも。

「そうかい。あの男が寂しがるだろうね」

タマモの養父であるシノビの顔を思い浮かべながら、大女将が残念そうに呟いた。

「まったく何処ほっつき歩いてるんだろうね、あの馬鹿娘は」

残念だが、それでいい。いつまでもこんな街を気に掛ける必要はない。大女将はやれやれと毒づきながら、どこか残念そうな反面どこか清々した表情を浮かべた。

 

 

絶海の孤島レムリア。

ひとりの小柄な、まだ二十にも程遠い幼さの残るシノビが海岸で魚を釣っている。鋭い棘の生えた毒々しい魚を釣り上げて、手早く肝を取り出し頑丈な短剣で豆腐でも斬る様に棘を落とし、肝は燻製に、棘は乾燥させるために天日干しに、身はぶつ切りして鍋に放り込んだ。

「その魚、まさか食べる気じゃないだろうな」

「知らないんですか。この魚、棘は猛毒が含まれてますけど、肝と身は舌が蕩けるくらい美味しいんですよ」

「ほう、それは知らなかったな」

「あげませんよ。欲しければ自分で釣って下さい」

シノビは声をかけてきた男を、野良犬でも追い払う様に冷たくあしらい、再び釣りに興じ始めた。

 

荒れた海域に浮かぶ孤島には今日も冒険者で溢れている。