世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 3周目 赤髪の暗殺者

思い付きでつづる妄想マスタリーも3周目ですのん

Ⅱ 令嬢、鎌を携えて遺跡を歩む

カミラの目の前には、迷宮としては小さめだろうか。通路が複雑に入り組みながらも、それほど広さを感じさせない遺跡が広がっている。壁や床はところどころ青白く光っているものの、術式や罠の類ではなく、模様の凹凸に生えた苔の一種のようだ。

「さて、なるべく楽しく探索しましょう」

「楽しくとは?」

カミラが笑みを浮かべながら、背負っていた鎌を手に取り、

「決まってるじゃない。なるべく多くの敵を倒して、余計な血をどんどん流して、ついでにお腹いっぱいになることよ」

同行する薬師の少女が不安半分動揺半分といった顔で、一行の中で割と人間性を感じさせるヴラムの方に視線を投げかける。ヴラムはやれやれといった様子で主の顔と薬師の顔を交互に見比べ、

「お嬢様、今回は同行者もいますので、極力上品にお願いします」

と効果の程は未知数だが、一応の進言はしておいた。

が、早速効果はあったのか、忠告を受けたカミラから

「そうね、怖がらせるのはよくないわ。みんな狩る時は素早く手短にね」

との達示があり、全員が各々好き勝手に返事をしつつ、素早く手短に且つなるだけ楽しく、が今回の探索のルールとなった。

 

曲がり角の先にいる人間大の蠅の様な化け物が一振りで両断される。

カミラの武器は長い柄の先端に取りつけた鎌で、これを上下左右巧みに振り回し、遠心力を上乗せした刃で豪快に切り裂く。また鎌を取り外して標的めがけて投げつける投剣も用いる。死神と称されるリーパーの技を軸に、暗殺者に多いナイトシーカーの技を複合させた特異な戦い方で、まるで踊る様に屍の山を築いていく。

一方、エルゼベートは回復や弱体を引き起こす巫術と、それを刃に付与した独特な剣術・巫剣を操るドクトルマグスの技術に加えて、盾でのぶちかましや速度に重点を置いた速攻も用いるソードマンの技を融合させたスタイルだが、剣ではなく打撃に特化したメイスで技を揮う異色の剣士だ。

西方の広大な大地に生きる亜人種ウロビトが開発した広範囲に罠を張る方陣の使い手であるピィエンだが、方陣以外にも基本的な星術を習得しており、大気中のエーテルと呼ばれる元素を触媒として、火球や氷柱を作り出すことが出来る。この中では唯一、格闘戦を得意としない術士だ。

オルロックはカミラ同様に手持ちの武器を投げつけるナイトシーカーの技を使いながらも、何処で習得したのか残像を生み出す世界各地でも珍しい英雄の技も使いこなす。またマギニアの紋章が描かれた軍旗を掲げて、膨大な量の生命力と体力の恩恵を受ける事も出来る、長期戦にも長けた剣士だ。

そして執事のヴラムは砲剣と呼ばれる爆発的な火力を内蔵した機械式の大剣を扱うインペリアルの技能を主体に、自身の生命力を使って周囲を補佐するハイランダーの技術も習得している。

本来、2種類以上の技能を用いるには、皆伝の書や双牙武典といった武術指南書に記された知識と相応の訓練が必要とされるが、これも吸血鬼の加護なのか、各々がカミラに血を捧げた翌日には膨大な知識と共に自分の求めていた技術も習得していた。

血は主従を繋ぐ鎖であり、力を授かる対価でもある。とは伯爵の言である。

主が血を吸う、或いは飲み込むことで得た技や知識は主の血として吸収されて残り、加護のひとつとして血を捧げた者に与えられる。ハイランダーなど直に見たことはないが、ヴラムは血を捧げた50年ほど前にすでに手にしたこともない槍の技術を会得していた。

そうして得た技は本来の己の技と一体となり、おおよそ新米冒険者とも思えない力を発揮させ、一行が歩んだ後には無数の血だまりと屍の山が築かれていた。そうした中で化け物の群れだった残骸の奥に、一匹の犬が唸り声を上げている姿を確認した。

カミラは鎌を背負って笑顔で犬に近づき、噛みつくのも意に介さずに笑顔で犬を抱きかかえる。

「はい、この子が逸れた仲間ね」

全身返り血まみれのカミラに抱えられ、大暴れしている犬を渡された薬師の少女は多少青ざめた顔をしているものの、素直に礼を述べてマギニアの市街地へと帰っていった。

 

帰還した冒険者の姿は、一目でわかると言われている。靴は土と泥で汚れ、服は大なり小なり返り血で赤く染まり、血と汗の混じった強烈な臭いを漂わせる。そして住人はそんな冒険者を労って、中には豪快に樽に入った水を浴びせて迎える者もいる。

ギニアの住人達には冒険者の帰還は慣れたものであったが、それにしても酷い姿だ、と後ずさりながら暗闇のヴィオラを出迎える。鼻を覆いたくなるほどの血の臭いに、化け物の死骸から剥ぎ取った数々の戦利品、おおよそ同じ人間とは思えない吸血鬼独特の気配も相成って、その姿は町に紛れ込んだ怪物の群れと錯覚しそうになる。

しかし彼女たちが幼気な薬師の頼みを聞き、無事に薬師の家族を救出したことを知る住人達は、樽に入った水を頭からぶっ掛けて冒険者の帰還を迎えたのである。

「おいおい、ずいぶんな出迎えだなあ」

「マギニアではこういう流儀なんだとよ」

水を掛けられて顔をしかめるエルゼベートに、ピィエンが同じく頭から水を垂らしながら教える。

「でも結局お風呂は入るから、これって水の無駄なんじゃない?」

「お嬢様、それだけ我々が臭いんですよ」

そのまま町に入れたくない程に臭うのだろう、この日はいつもの3倍の水が冒険者の一団に浴びせ掛けられた。