世界樹の迷宮X妄想マスタリー雑記 3周目 赤髪の暗殺者

思い付きでつづる妄想マスタリーも3周目ですのん

Ⅲ 赤蛇の隊長とロカ族の若き長

「隊長、それは無茶苦茶にも程があるだろ」

ラシャが半ば呆れた顔でメイを窘める。オズワルトとアリスも困惑を隠せない表情でこちらを見ている。

こういう反応は当然起こるだろうとは思っていた。海の一族と手を組む。非公式な密約ではあるが、暗部の末端とはいえマギニアに属している組織の一員である以上、そんな背信に近い行為は到底受け入れられない。赤蛇の旅団としてマギニア乗船前から苦楽を共にしてきた3人でさえこの有様なのだから、ピカロやマシラ達は絶対に認めないだろう。しかし単純に利害だけで考えれば海の一族の情報は必要だ、彼らは自分達より数段このレムリアの事を調べ上げている。それに彼らに秘宝を奪われない為にも、その動向を把握しておく必要もある。

メイは組織の上の事を無条件に信用しているわけではない。モーゼス一家を説得した時の「秘宝の真偽がはっきりするまで消されることはない」と吐いた言葉は嘘偽りないものではあるが、組織が遠慮も敬意も持たずに行動すれば、自分の意思とは無関係に喋らせる手段を取ってもおかしくはない。いざという時の身の置き所は確保しておいて損はない。

出し抜こうとしている事実がある以上、流石にマギニア軍部に亡命するわけにもいかないだろう。エトリアやハイ・ラガードに逃げるにしても、食糧庫から出る際には一個人が持つことを許されない気球か飛行艇を使う必要がある限り、組織の手から逃れることは不可能に等しい。ならばレムリアと外海を結ぶ航路を持つ海の一族が最も適任だ。

しかし理屈で納得できても心はそうはいかない。特にバグラッドに恩義を感じているオズワルトは梃子でも動かないといった様子で、ラシャとアリスも組織と敵対しうるリスクを恐れて難しそうな顔で眉間に皺を寄せている。

 

落としどころとしてはこのくらいが丁度いいのかもしれない。

赤蛇の旅団はオズワルトを新隊長にこれまで通り、組織の手足としてマギニアを出し抜く為に秘宝探しを行う。メイとロザリーはギルドとしての代表ではあるが、別行動で海の一族との接触を図りながら、表向きの建前は秘宝を先に奪われないためのスパイとして行動する。しかし組織から見れば、この行為はやはり承服しかねるものであり、ピカロやマシラ達は勿論、モーゼス一家やジェントルとロマーンも首を縦に振らなかった。

「随分メンバーも減っちまったなあ」

「覚悟はしてたけどね」

「それよりお前、あたしに相談くらいしろよ。ついて行かねえって言ってたら、どうするつもりだったんだ?」

「え、ロザリーはずっと一緒に来てくれると思ってたんだけど」

ロザリーが裏表のないメイからの信頼に照れくさそうに頬を指先で引っ掻く。おそらくメイが損得の計算無しに信用しているのは自分だけだろう、ロザリーはそう考え、メイもロザリーがそう思ってくれていることを理解している。十年以上、衣食と住を共にすれば言葉が不要になるものだが、それ故にこんな大事の決定においても言葉が足りないことがある。

「しょうがねえなあ、うちの隊長はよ」

ロザリーがメイの頭を小突きながら毒づく。

結局メイの下に残ったのは副官のロザリー、アリス、ベスティアの3人。アリスは最後まで悩んでいたが、メイとロザリー抜きでピカロ達と行動することに抵抗を覚え、ベスティアは名前を与えられたからか、組織への忠誠よりもメイへの恩を優先した。モーゼス一家は火薬や弾薬の提供は継続してくれると約束してくれたものの、表立って協力は出来ないと渋い顔をしていた。

「で、隊長。これからどうするんだ? 迷宮に挑むにも頭数が足りねえ」

「それなんだけどね、ジールとゴンザロ、海の一族の水兵長なんだけど、彼らから戦力を借りることが出来たの」

「そいつらは強いのか?」

「さあ。でも攻め手は私とロザリーとあんたで一応足りてるし、アリスみたいに補助的な動きをしてくれるだけでも有難いんだけど」

そう答えるメイの前に、4つの人影が立ちはだかる。まさか組織の刺客がもう来たのか、メイ達がいつでも戦闘に移れるように武器に手を伸ばすと、人影は羽織っていた外套を脱いで、見るものの目を引かずにはいられない独特な葉のような色の髪に土色の肌を晒す。それは紛れもなく食糧庫の山岳地帯を陣取る先住民族、ロカ族の特徴だ。

ロカ族の男がひとり、女が3人。まだ若く、男の方は二十代後半、更に3人娘は年でいえばメイともそう変わらない。まだ10代半ば、多く見積もっても二十に届くか否か、といったところだ。

「久しぶりだな、ロザリンド」

ロザリーが細い目を更に細めて、ロカ族の男を凝視する。そして数十秒程経って、ようやく目の前の男がかつて何度も小競り合いを繰り広げた族長の息子だと気づく。

「なんだよ、おめえも相変わらずしぶてえなあ」

「そういうお前は、口の悪さは変わらんのだな」

ロカ族の男はメイの目の前に足を踏み出し、自分がロカ族の族長のひとりで、今は傭兵として海の一族に雇われていることを告げた。

「俺はア・ローカ。ロカ族の西山岳地帯の族長だ」

「よろしく」

メイとア・ローカはしっかりと握手を交わした。マギニアを出し抜こうとする者、マギニアと長きに渡り敵対する者、両者の間で共通した思惑が一致したのか、両者は思いの外すんなりと相手を受け入れた。

「ところでア・ローカ、そのお嬢さん方もロカ族の戦士なのか?」

「ああ。妻でロカ族の占い師ロ・カーナ、同じく妻でロカ族の巫女カ・シンラ、同じく妻でロカ族の祈祷師ラ・シーカ」

どこか得意気に紹介していくア・ローカの横で、3人娘がメイとロザリーに向かって順番に頭を下げる。3人も妻がいて揉めたりしないのだろうか。メイはどうでもいい心配をしながら、気の良さそうな3人娘に会釈を返す。

「ロカ族の掟で戦に出るのは男だけだが、ここはレムリア、部族の地ではない。必要とあらば妻達も迷宮に挑むし、それに3人ともそこらの男衆には劣らぬ腕を持っている。流石は俺の妻、と言ったところか」

ア・ローカがにやりと笑いながら、早速迷宮に向かうことを提案する。

メイは即答でまずロカ族の実力を確かめたい、とすでに探索の終えた迷宮での腕試しを提案し、手頃な場所として霊堂へ向かうことにした。

 

人生は別れと出会いの繰り返しだと誰かが言った。この日の別れと出会いはメイの運命を大きく左右することになるのかもしれないし、存外他愛もない取るに足らない出来事なのかもしれない。それはまだメイにも周りにも誰にもわからない。